新野町「あじさい街道」の教え(新聞掲載)
ハンドル越しに見えるのは、あぜ道を飾る華やかな満開の花。高校まで過ごした阿南市新野町にUターンすると決め、引っ越しの荷物を運ぶ私を出迎え祝福するかのように、「あじさい街道」が続いている。
この時期に帰省することがなかっただけに、初めて目にしてびっくりした。新野町新田地区はタケノコが特産で、竹林と水田の姿は緑一色。それだけに赤、白、紫とカラフルなあじさいは、まるでステージ衣装のようにあでやかだ。
私が故郷を出ていた30年余りのあいだ、衰退する地域社会を横目で見ながら還暦を超えた。地方には「何もない」のではなく、魅力は「作り出すもの」。わざわざ自動車を止めてスマホをかざし可憐な花に見入る人が、それを物語っている。
そうだ。Uターン後の新生活も、与えられるのではなく「作り出す」ことを意識しながらやっていこう。そんな気になった、明るい梅雨空の下。
※徳島新聞 読者の手紙掲載
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