Uターン増は、魅力のバロメーター。(私的論説)

●郷土のお役に立ちたい

私はUターンで故郷・阿南市新野町に帰郷した。その際、選択肢はもうひとつあった。働きなれた大阪で勤め上げ、余生を慣れた都会で過ごす選択だ。 だが、生まれ育った地域社会が寂しくなっていくのを黙ってみていることができず、故郷の再生のために「何か一つでもお役に立ちたい」という思いがだんだん強く沸き上がってきた。


 それはたぶん、望郷の念かもしれないし、せっかくの宝物を市内外の人にも知ってほしいという広告マンならではの特性かもしれない。


●激変する世界・国家・地域

さいわい私は、直近の4年半において新聞記事を書く機会に恵まれた。そこで、人々や社会の意識変化を注意深くみるようになった。また、社会の仕組みを力学構造(お金の流れ)から読み解いたり、消費に傾きすぎた文明を振り返ったり、権威や常識を利用するマスコミ報道の嘘を見破ったりした。


こうした分析を続けていると、「いま」という時代がとてつもなく大きな地殻変動の真っただ中にいるという、緊迫した空気を感じることができる。 みなさんもご存じの通り、去年からは本格化したコロナ自粛の機運は「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」などによって、全国の経済に冷や水を浴びせかけた。 国家挙げてのロックダウンやワクチンパスポートの義務化など、世界には日本よりはるかに厳しい措置を講じる国もあり、それは先の見えないトンネルに突入したかのようだ。


しかも、激変要因はコロナ経済だけではない。2021年のお盆は、九州地方・中国地方から関東地方にいたるまで記録を塗り替える豪雨が連日続いた。異常気象はもはや、異常でもなんでもなく、日常的に繰り返されるものになってしまった。


それほどまでに地球の置かれている「環境異変」が常態化している。 世界でも豪雨洪水は続発しており、トルコや中国は水浸しで、農産物の生産や畜産にも多大な影響が出ている。また、山林火災も世界中で起きている。これまで安定的に生産し、交易し、旅行を楽しんだ時代は、もはや過去のものになってしまった感がある。


そうであれば、阿南の魅力をいかに見いだし、育成し、発信すればいいか?それは「ぬくもりの魅力」とでもいうか、国家全体でリスク分散し「ぬくもり=リスクのない」良さを、発掘して棚卸しすることが必要だ。


 ●マイナスをプラスに転じる総力

例えば、

★人口減少・空き家増は→移住・受け皿の増加であるととらえる。

★進出企業が少ないのは→競合企業がなく進出有利であるととらえる。

★東京大阪の本社からの距離があるのは→リモートオフィス時代にはハンデにはならず、ワーケーション※上も有利であるととらえる。

 ※ワーケーション:「Work(ワーク)」と「Vacation(バケーション)」の造語であり、地方で働きながら休暇が有意義に行える仕組みのこと。


 こうした、マイナス要因を逆転させた価値転換は、これからの阿南市の生き残りを左右する重要な政策軸である。


●宝探し

 阿南は、私がかつて過ごした都会(東京や大阪)の市外から見ると、たくさんの宝物が眠っている。だが内部で当たり前に過ごしていると、なかなかそれを発見できない。


外部社会の第一線で働いてきた私にできることは、その阿南の宝物を外部目線で掘り起こし、ていねいに発信することだ。


手法はデジタル、動画、SNS、クラウド、AIレコメンドなど、最先端のITテクノロジーをフル活用する。 それを継続することで、阿南のプレゼンス※を高めることができる。そして、「全国の人に阿南のお宝を知ってもらうことができる」。

※プレゼンス:=社会的地位


 ●魅力は、移住やUターンで評価される

誰かが「移住したくなる」ということは、すべての項目において阿南の土地が評価されたからである。その要因は今後、阿南市の叡智人材を結集して分析しなければならないが、ひとつヒントを出すならこれまでの時代ような「利便性や就職先の規模や報酬の高さ」が人の満足につながるのではない、ということだろう。


例えば、観光旅行にしても、歴史好きなら阿南市加茂町の遺跡は、おおいに知的好奇心をくすぐる。 加茂町の加茂宮ノ前遺跡で、なんと縄文時代後期(約4千~3千年前)の赤色顔料(水銀朱)の精製に使ったとみられる石杵(きね)や石臼など1千点以上が追加で見つかった。同遺跡は生産拠点として国内最古級になる。 縄文時代後期(約4千~3千年前)の赤色顔料(水銀朱)の精製に使ったとみられる石杵(きね)や石臼など1千点以上が見つかった。


同遺跡では、弥生時代中期の水銀朱の原料などが見つかっていたが、1500年以上さかのぼり、生産拠点として国内最古級になる。これは加茂町という山間の集落が当時の最先端ハイテク都市であったことを示しており、技術や暮らしや生活を再現研究し、それを学校教材にしたり、民泊での宿泊者プレゼンテーションにもできる。


冶金技術者に協力を仰ぎ技術を再現してもらって、当時の鉄で装飾品をつくって阿南ブランド化するのもロマンがあっていい。 「移住したくなる」にはこのような歴史的な深さを、今風の収入・環境・学校・食生活などの利便性で程よくバランスさせることが重要だ。


 今までは「収入と利便性」だけで京阪神に行って帰ってこなかったが、「移住したくなる」には「結局バランスのよさだね」ということになるだろう。 つまり、「条件を比較したら阿南市って総合点で高いね」ということになる。


この視点から宝物を掘り起こすことが私の使命だし、環境や、アウトドアレジャーや、歴史文化や、災害安全性などさまざまな総合点をいかに高くしていくかが勝負になる。

栗本、敬浩。

徳島県阿南市でコピーライター&キャスターとして活動する栗本敬浩のサイト。

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